保健管理

回答者 筑紫小学校・常葉高等学校 学校歯科医 井上 良太郎

Q1. 学校での歯や口のケガについて、ケガについての対処法、学校での手続きはどのようにすれば良いですか。

【答え】意識障害など、重篤と思われるケガをしているところがある場合、蘇生法等を行い、至急、医科歯科病院へお願い致します。顔面・口腔内のみのケガの場合、止血、アイシング等の応急処置、歯が脱落した場合は保存液に入れて学校歯科医、かかりつけ歯科医院へお願い致します。災害給付制度手続きに関しては、医療機関に医療等の状況の書類を作成してもらい、学校に提出します。

Q2.矯正治療中の児童・生徒の健康診断票への記載方法はどのようになっているでしょうか。
また、治療勧告者数に含めるのでしょうか?

【答え】矯正治療中「歯列・咬合」の判定は「1」(経過観察)とし、「矯正治療中」と歯科医師所見欄に記入。健康診断のお知らせに歯列・咬合の欄は経過観察にチェックします。「1」(経過観察)は治療勧告者ではありません。

Q3. 歯科健康診断票へ記入する際、癒着歯(癒合歯)の歯数は何本とするの。

【答え】癒合歯か癒着歯かわからない場合は、癒着歯として学校歯科医所見欄に記入。本数は前方の1本です。例としてbcが癒着歯(癒合歯)の場合、健診票のbcの下に「ゆ」と記載し、現在歯はbになります。

Q4. 「サホライド塗布歯は、COに準ずるが、治療を要する場合はCとする」と記載があります。
治療を要しないサホライド塗布歯はCOでしょうか。

【答え】サホライド塗布されていると認める歯で、治療を要する場合は「C」。
治療を要しないと認める歯は、COに準ずる歯として「CO」とします。
サホライド塗布歯であることを明確にしておきたい場合は、㋚という記号を使用します。但し、担当校の養護教諭との認識の共有をはかっておいてください。

Q5. 歯頚部の白濁や小窩裂溝が着色しているCOが多数認められる場合は「CO要相談」とするとあるが、「多数」とは何歯以上を示しているのでしょうか。

【答え】「CO要相談」の対象となるのは、隣接面や修復物下部の着色変化、むし歯の初期病変の症状が多数認められ、歯列、歯垢、歯肉状態から、近い将来むし歯が進行してしまう可能性が高い児童生徒であり、COの本数にとらわれることなく所見欄に「CO要相談」と記入してください。

回答者 吉井小学校 学校歯科医 田村 昌彦

Q6. 前歯部の歯間乳頭10か所の内、1か所でも腫れていたらGOと診断するのでしょうか。

【答え】学校歯科健診では、歯肉炎を早期に発見し、学校での保健指導によって歯周疾患を予防する事が目的であり、たとえ10か所の内1か所だとしても保健指導の必要性があると判断された場合、GOと診断するのが良いと思います。

Q7.エナメル質形成不全をCと判断された場合、むし歯にカウントされることで児童や保護者がショックを受けることがあります。探針を使用しないのでしかたないのでしょうか。

【答え】歯科健康診断ふるい分け(スクリーニング)検査は、確定診断を行うものではないので使用器具、診断方法にも制限があります。児童や保護者の方には、地域歯科医院への受診をお勧めし、現在の口腔内の状況を知ってもらい、歯科健診への理解と協力をお願いすることが大事だと思います。

Q8. 複数歯にエナメル質形成不全が観察される場合は、CO(要相談)とするべきでしょうか。 
また、歯科医所見欄の記載は「エナメル質形成不全」または「CO」、どちらが適切でしょうか。

【答え】エナメル質形成不全は、エナメル質の減形成・石灰化不全により起こるもので、COのような細菌感染によるものとは別で考えるべきだと思います。口腔内の状況によりCOと診断せざる得ない症例もありますが、原因因子の異なるものなので所見欄の記載は「エナメル質形成不全」が適切だと思います。

Q9. 歯科健康診断時に使用する器具の消毒等の準備について、どの様な点に留意すべきでしょうか?

【答え】新型コロナウイルス感染症等新しい感染症も発生し、一般の人々の消毒に対する見方もより厳しくなってきています。学校歯科健康診断においても、より厳密な消毒方法が必要と思われます。
歯科健康診断で用いる器具は、対象となる児童生徒の人数分を準備し、滅菌パック等に入れオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)を使用して滅菌しておくのが良いでしょう。

Q10. 同一口腔内で隣接面や修復物下部の着色変化による「CO要相談」と普通の「CO」が混在する場合、歯式や学校歯科医所見欄にはどう書いたらいいですか。

【答え】CO要相談とは、COまたは隣接面や修復物下部の着色変化が多数歯認められる口腔内の状況をいいます。よって歯式は「CO」、歯科医師所見欄は「CO要相談」と記載するのが良いと思います。

回答者 久留米聴覚特別支援学校 学校歯科医 古賀 斉

Q11. 健診時、CR充填しているかどうか、迷う時はどうしたらいいですか。

【答え】学校歯科健診時には主に視診で行う場合が多いと思います。プラーク・食渣の除去や裂溝の充填物の有無の確認を目的とする診査の補助器具として探針、CPIプローブ等が推奨されます。ただし、限られた時間と環境の中、判断の難しい歯もありますので昨年以前の健診結果等も参考にされるのも良いと思います。

Q12. 過去の健診結果と比べると明らかに矛盾があります。どういうことでしょうか。

【答え】児童・生徒と健診票のズレ、健診時の診断ミス(処置歯と健全歯の混同など)や記入ミス、または養護教諭による集計時のミス、または、昨年度以前の歯科健診時のミスが経年的に継続されている場合もあります。歯科健診における矛盾点に気づいたら、速やかに学校歯科医、養護教諭、記入者、または昨年以前の歯科健診担当者と協議して矛盾点の是正をお願い致します。

Q13. 病気や諸事情で校医以外の歯科医が学校健診を行うことは問題ありませんか。

【答え】健康診断結果の信頼性を確保するための管理は学校歯科医師の責任です。学校歯科医以外の歯科医が健康診断を行う場合は、事前にCOやGO等の学校歯科独自の考え方の共通理解のため、福岡県学校歯科医会発行の学校歯科医ハンディノート等を用いて診断基準の打ち合わせを実施する必要があります。

保健教育

Q1.歯・口・顔の成長・発達に悪影響を及ぼす癖や習慣にはどのようなものがありますか。
また、それに対する対処法はどのようにすれば良いですか。

【答え】歯・口・顔の成長・発達に悪影響を及ぼす癖や習慣として、指しゃぶり、舌を前方に突き出す癖、唇をかむ癖、爪をかむ癖、歯ぎしり、偏咀嚼、頬づえ、いつも同じ向きに寝る、口呼吸などがありますが、生活習慣の中で見られるものがほとんどです。
これらの悪い習癖を早めに直すようにすることや、偏食をなくすこと、よく噛むことをお勧めします。よく噛むことには、身体全体がかかわりを持っているのです。

Q2.C・COの多数保有者に対しては、どのような個別指導が効果的でしょうか。

【答え】CやCOの多数保有は、長期にわたる不適切な生活習慣によって引き起こされたものと考えられます。CやCOの多数保有者には、歯科受診勧告を行いますが、それと並行して学校での個々に応じた保健指導を行うことが効果的です。個別指導を行うにあたり、局所的視点だけでなく食習慣を含めた生活習慣や家庭環境等、多面的に生活環境を把握して個々に応じた指導を行う必要があります。家庭環境等に問題がある場合もあり地域の関係機関との連携が必要な場合もあります。

回答者 今任小学校・落合小学校・添田小学校 学校歯科医 菅 義浩

Q3.治療勧告に従わない児童・生徒の保護者へはどのように対応すればよいでしょうか。

【答え】何より、なぜ治療勧告に従わないのか、原因があるはずです。単純に歯科治療が怖い、嫌い、という児童・生徒もいますし、本人や保護者が歯科治療に無関心の可能性もあります。児童・生徒や保護者への歯科保健教育が有効と考えられますが、1度や2度の対応ではなかなか意識を変えることは難しいかもしれません。根気強く対応できる環境をクラス担任、養護教諭、学校歯科医等と構築していかなければなりません。

Q4.校医が忙しく、保健教育にあまり熱心ではありません。福岡県学校歯科医会に
保健指導をお願いすることはできますか。

【答え】学校歯科医は、学校歯科健診だけではなく、学校での歯科保健教育等にも積極的に従事する必要があります。しかし、様々な事情により上手く連携が取れないケースが存在しています。担当の学校歯科医との協力体制の構築が困難な場合は、まず、地域の学校歯科医会、または歯科医師会にご相談されてください。
福岡県学校歯科医会ではホームページの充実、パンフレット作成等により、学校歯科医による保健指導の一助となる参考資料の充実を今後より一層、図っていく所存です。

組織活動

Q1.学校保健委員会に学校歯科医の代わりに歯科衛生士や勤務医などの代理出席は可能ですか。

【答え】 学校保健委員会は学校長による諮問機関ですので、直接、学校へお問い合わせ下さい。ただ、学校保健委員会の開催様式、及び、各学校長の判断によりますが、委員会時に、学校歯科医の視点からの適切な意見や助言、また総合的に実践する事は学校歯科医でないと難しいのではないでしょうか?
基本的には学校歯科医本人が出席すべきだと考えます。

Q2.校医が忙しく、学校保健員会に出席してくれません。福岡県学校歯科医会で代わりの先生を派遣したり、出席を促したりしてもらえないでしょうか。

【答え】学校歯科医は福岡県学校歯科医会が推薦しているわけではありません。そのため当会による代替推薦は出来ません。担当の学校歯科医と出来るだけ交渉して頂きたいのですが、諸事情により交渉が困難な場合、まずは地域の学校歯科医会または歯科医師会にご相談ください。
福岡県学校歯科医会では、学校保健委員会の意義や必要性の説明、また、毎年11月に行っている福岡県学校歯科保健研究大会において発表された各学校の実践例の紹介等により、学校保健委員会の普及活動をより推進してまいります。

Q3.自分が担当する学校では、学校保健委員会が開催されていません。保健指導を行いたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

【答え】学校保健委員会は学校長の諮問機関として存在しています。文部科学省も開催するよう推奨しており、学校長へ学校保健委員会の開催意義を理解してもらい、開催してもらえるように努力は必要と思います。諸事情により、開催されていない学校でも、保健指導は行うことはできますので、学校長、養護教諭等と連携して状況に合わせた保健指導を実践してください。

Q4.学校保健委員会が開催されていなかったり、出席しなかったりすることは法的になにか問題はありますか。

【答え】現在、法的な罰則はありません。しかし、学校保健委員会は、児童・生徒たちが健康で安全な生活を送る力を身につけるため、研究・協議・実践していく組織であり、学校、家庭、地域社会をつなぐ中核となる存在です。学校長を中心とした学校保健委員会の体制づくりを是非、ご推進戴きたいです。また、委員会が開催される場合には、積極的なご参加をお願い致します。

質問箱

※いただきましたご質問はホームページに掲載させていただく場合がございます。